手のひらに大量の汗をかく多汗症を手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)といいます。症状がひどい手のひら多汗症(手掌多汗症)の場合は日常生活に支障をきたすほどで病院での治療対象になります。精神的緊張や体温変化が誘発原因になることも多いですが、緊張していないときでも手のひらに汗をかくのが手のひら多汗症(手掌多汗症)です。局所性多汗症のひとつである手のひらの多汗症(手掌多汗症)は100人に1人といわれるほどであるにもかかわらず、多汗症自体の認知度が低いせいか治療されずに放置されていることが多いようです。
手のひらに大量の汗をかく手掌多汗症の原因は、交感神経の機能亢進によるものですから、精神的緊張によって手のひらに汗をかくのではなく、精神的緊張がなくとも汗をかいてしまう状態です。汗をかく量はさまざまで、手のひら多汗症は発汗の程度で3つに分けられます。手のひらが濡れるぐらいに発汗するが拳を握っても汗が滴下しない⇒拳を握ると汗が滴下する⇒手のひらを開いていても汗が滴下する、という具合で、ひどいケースでは日常生活や社会生活に支障をきたすため適切な治療が必要です。軽度の手のひら多汗症ならば自分でできる多汗症対策で症状を軽減できることもありますが、ひどい手のひら多汗症ならば病院での治療をおすすめします。
手のひら多汗症の特徴のひとつとして、小児期に発症することが多く成人になっても症状が継続することが挙げられます。具体的な手のひら多汗症の症状として、学校生活では、汗で紙が破れたり鉛筆書きができなくなる・鉄棒や球技が難しくなる・他人と接触する行為が嫌いになる、など学業だけでなく人間関係にも差し障りが出てしまいます。握手・パソコンのキーボードの扱い・紙幣やレシートの受け渡しなどでも不便が伴います。また、手のひら多汗症の特徴として、それほど強くない精神的緊張や体温変化が引き金になって多汗になることが挙げられます。手のひらに大量の汗をかくことで悩んだり、ことさらに汗を意識して「汗をかくまい」「汗をかきたくない」と思ったり、「汗をかくかもしれない」という予期不安から、精神的緊張が強くなって、更に手のひら多汗症(手掌多汗症)を悪化させるという悪循環に陥る人も少なからずいるようです。手のひら多汗症(手掌多汗症)の原因の詳細は解明されていませんが、几帳面で素直な性格の人がこの悪循環に陥る傾向にあるようです。そのため、手のひら多汗症(手掌多汗症)の治療は、基本的には皮膚科の治療ですが、精神科や心療内科的な治療法、麻酔科やベインクリニック的な治療法を受けていることも多いようです。
手のひら多汗症(手掌多汗症)の根治的治療法として、胸部交感神経遮断手術があります。交感神経の機能亢進が手のひら多汗症の原因ですから、その神経を切り取ったり焼いたりすることで神経の働きを止めるので汗はピタリと出なくなります。胸部交感神経遮断手術は確実な効果が期待できる半面、開胸手術による傷が大きく残ることや副作用のため普及には至りませんでした。この手術方法のデメリットをカバーするのが胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)という手術です。この手術は、腋の下・顔面・頭部の多汗症にも効果がありますが、手のひらの多汗症においては特効薬ともいえる治療法といわれています。身体的負担が軽く保険適用の手術です。ただ、この内視鏡外科手術(ETS手術)にもデメリットが残ります。副作用です。この副作用を克服すべく内視鏡外科手術(ETS手術)の技術も進歩していますが、病院によって技術レベルや設備が異なりますから、内視鏡外科手術(ETS手術)をするなら慎重に病院選びをすることが重要になります。他の治療法として、心身療法(心理療法・自律訓練法・精神安定剤による治療)、薬物療法(飲み薬と塗り薬:神経遮断薬やアルミニウム配合の外用制汗剤による治療)、イオントフォレーシス(イオン発生装置)を使った治療法があります。

